ボードゲームマイライフ

トライボーディアン勢によるオセロ囲碁将棋その他についてのブログ

オセロ・囲碁・将棋の持ち時間について

今回は「持ち時間」についてのお話です。

 

仲間内でカジュアルに対局する場合はさておき、大会など公式な対局においてはほぼ必ず持ち時間が設定されています。

その昔(江戸時代)、囲碁が幕府の庇護を受けていた時代には、時間無制限、かつ上手が「マァマァ今日はこれくらいにしておこう」と言って好きな時に打掛け(中断)にできるという慣習の下で公式な対局が行われていたという話もありますが、忙しい現代人はそういうわけにはいきません(そもそも競技としてはかなり不公平なルールですね。)。

 

どのような設定になっているかは、競技や立場(プロ、アマ)によって異なるので、少し概観してみたいと思います。

 

 

① プロの場合

持ち時間に関して、プロアマの違いは非常に大きいです。

 

プロは、基本的には1日1局しか打ち(指し)ませんので、持ち時間も長めに設定される傾向にあります。

おおむね双方1時間から3時間の範囲が多いように思いますが、重要な対局、レベルの高い対局であればあるほど長くなるのが通常です。

 

ちなみに今日将棋のA級順位戦の最終局一斉対局が行われています。順位戦将棋棋士の格付けに直結する最も重要な棋戦と考えられていますが、持ち時間はクラスにかかわらず双方6時間で、1日で行われる対局としては最も長い設定となっています。

 

タイトル戦の挑戦手合いとなると、双方8時間、9時間というさらに長い持ち時間が設定される場合があります。

特に権威が高いとされているタイトル戦にこの設定が多く、囲碁では棋聖、名人、本因坊の三大タイトル、将棋では竜王、名人、王位、王将の各棋戦がこのカテゴリーに該当します。

8時間又は9時間の持ち時間が設定された対局は、2日制で行われます。

 

なお、小規模な棋戦や、日程が限られていて1日に複数対局をこなさなければならない棋戦、又はテレビ棋戦等では、例外的に短い持ち時間が設定されることもあります。

 

ちなみに、持ち時間の減らし方についてはストップウォッチ方式チェスクロック方式の2通りがあります。

ストップウォッチ方式の場合、「1分未満の考慮時間は切り捨て」となります。

つまり、4分59秒で着手した場合、減る持ち時間は4分となりますし、1分未満で着手した場合には全く持ち時間は減らないことになります。持ち時間が長いプロ棋戦だからこそのどんぶり勘定といったところでしょうか、、、

 

チェスクロック方式の場合には、持ち時間はコンマ一秒単位で容赦なく減っていきますので、対局の雰囲気もかなりスピーディになってきます。時間を浪費するのはもったいないですからね。

プロの棋戦では、ストップウォッチ方式とチェスクロック方式が併用されていて、やはり大きな対局ではストップウォッチ方式が採用される傾向にあるようです。

 

 

持ち時間が切れたらどうなるのか?というのが気になるところですが、プロの場合、せっかくの対局を時間切れを理由に打ち切ってしまうのはしのびないので(?)、原則として秒読みが設定されています。

秒読みに入った後は1手60秒以内とか、30秒以内とか、決められた時間内に着手し続ける限り、対局を続けることができます。

 

 

なお、オセロには現在プロ棋戦はありませんので、上記の話は囲碁と将棋に限った話となります。

 

 ② マチュアの場合

 プロとは異なり、マチュアの場合は、大会に出場すれば1日に複数局の対局をこなすのが通常です。

囲碁や将棋だと、1日4局から5局程度というのがよくあるパターンです。地方の大会だけでなく、全国規模の大会でも同様です。

持ち時間が短いオセロでは、1日6局というのがスタンダードです。コンパクトな大会なら5局、メジャー大会(全国大会)では8局くらいまで増えることもあります(稀に1日18局とか対局数の多さを売りにした大会が催される場合がありますが、例外です)。

ちなみに、オセロの世界選手権は予選13局を2日に分けて行い、3日目に予選上位4名による準決勝・決勝が行われることになっています。1日に7局打つ日と6局打つ日があるという感じですね。

 

当然、アマチュアの大会では持ち時間は短く設定されることがほとんどです。囲碁・将棋であれば双方40分程度が平均的と思います。オセロは20分持ちが最もポピュラーです。

 

マチュアの大会はほぼ全てチェスクロック方式で計時されるので、時間に関しては相当敏感にならざるを得ません。また、全国規模の大会では秒読みが設定されることもあるのですが、多くの大会では秒読みなしの「切れ負け」方式が採用されています。

その場合、時間が切れたら盤面がどんなに優勢でも問答無用で負けになってしまうのでさらにシビアで、最後は時計のたたき合いになることもしばしば(こうなるともはや別のゲーム)。

 

当然、相手の時間切れを狙った「切らしのテクニック」も存在します。

オセロなら「わざと相手に石をたくさんひっくり返させる手を打たせる」とか、将棋なら「受けきれないとわかっていても駒を自陣に打ち付けてひたすら粘る」とか。

オンラインの対局であれば、「明らかな最善手とは違う手をあえて打って(指して)相手の意表を付き、コンマ何秒稼ぐ」とかもあります。

実際相手にやられるとかなりイライラすることもありますが、全部ルールの範囲内なので、結局時間を残せなかった自分が悪い、ということになります。

 

 

以上に見てきたように、持ち時間というのは盤外の要素ではあるものの、ゲームの欠かせない一部になっているという側面があって、その対局の雰囲気や、時には勝負の行方を左右してしまうほど重要な要素でもあります。

プロの対局を見たりする時には、ぜひ持ち時間にも注目してみてください。

ボードゲームとAIについて、オセロ、囲碁、将棋の例から考える①(Alphago)

※筆者はAIの専門家ではないので、下記の話には多分に感覚的、推測的な要素が含まれていることをご了承ください。

 

 

 

近年はAI=人工知能の発展が目覚ましいところですが、真っ先にAIの影響を受けたのがボードゲームの領域と言えるのではないでしょうか。

 

ボードゲームの攻略はAIにとって得意分野でしょう。おそらくそれは、

 

「ルールが決まっている」

 

という点によるところが大きいのではないかと思います。

 

将棋は王様を詰ませば勝ち、囲碁は陣地の多い方が勝ち、オセロは最後に石が多い方が勝ち、というルールが決まっていて動くことがありませんし、着手のルールもあらかじめすべて厳密に決まっています。

よって、AIは定まったルールに対して抜群の計算能力・記憶能力を全力投入することで、人間よりも圧倒的に速いスピードでそのゲームを極めることができてしまいます。

 

 

人間の実生活の中でAIを活躍させようとすると、より複雑な話になってきます。何が一番良い行動なのか、というのを決定する統一的なルールがないからです。

たとえば、「おいしい料理を作るAI」を開発しようとした場合、「おいしい料理」を定義することによってはじめて、AIはその目標に向かって邁進することができますが、何が「おいしい」のかって、人によっても違いますし、時間がたつと好みが変わったりすることもありますよね。そういうふわふわした要素を妥当に評価するということ自体非常に難しそうです。

 

このような課題に対して、AIは現在「ディープ・ラーニング」という手法を主に用いて挑んでいます。

ディープ・ラーニングは、AIに超大量のデータを学習させて、AI自身でデータをパターン化して評価値に落とし込み、人間の手を借りずしてAI自ら「進化」していくことにその特徴があります。

 

このディープ・ラーニングという手法を広く世の中に認知させたのが、2016年に韓国の囲碁トッププロであるイ・セドル氏と5番勝負を行い、4勝1敗と圧倒したAI・Alphagoの登場でした。

 

 

ボードゲームはAIの得意分野」とは言うものの、それは

AIがそのボードゲームのことを「完全に理解している」ということを意味しているわけではありません。

着手のパターン・分岐が多すぎて、AIの計算能力が追い付かず、完全解析は不可能と考えられています(少なくとも現在は)。

 

AIは、合理的な時間内に、最善手をしらみつぶしに調べ尽くせる局面であれば、完全な正解を100%導くことができます。たとえば、長手数の難しい詰将棋であっても数秒でいとも簡単に解いてしまいますし、オセロであれば30個空き前後の局面ならば、多少時間をかければ全分岐についてどちらが何石勝つかを調べ尽くすことができます。

 

一方、分岐が多すぎる局面、答えが定まらないと思われる局面において良い手を選択する能力、いわゆる「感覚」というものにかけては、AIは人間を超えることはできない、ということが長らく信じられてきました。

殊に囲碁というゲームについては、19×19という着手可能箇所の多さから、ボードゲームの中でも、人間にとって最後の牙城と考えられていました。

 

私が本格的に囲碁をやっていたのは2005年から2008年くらいにかけての期間ですが、当時は「コンピュータが人間のプロに勝つには100年はかかるだろう」というようなことが普通に言われていました。

囲碁漫画の「ヒカルの碁」にもそのような言及があるのですが、中国のトッププロであるヤンハイさんが「俺には100年もいらない」と啖呵を切って未来を語るという、現在の有様から考えると非常に印象的な描写になっています)

 

このように、ボードゲームはルールが決まっているにもかかわらず、AIにとっては依然としてふわふわした「感覚」の領域が残っており、ここをどのように克服していくかが、AIにとってのボードゲーム攻略のカギだったのです。

 

「100年はかかる」のような言説は、「感覚」の克服はAIの計算能力の飛躍的な向上によって成し遂げられる、という固定観念から来ていたと考えられます。

要するに、「しらみつぶしできる範囲を広げる」アプローチですが、このアプローチではAIが「感覚」の領域を克服できたかどうか疑問が残り、そうすると人間としても、読みのAIに対して感覚の人間だ、いい勝負だ、という言い分をかろうじて保持できたかもしれません。

 

しかし、前述のAlphagoは、ディープ・ラーニングという従来とは全く別のアルゴリズムを採用することにより、「感覚」の領域において、少なくとも人間を上回ることに成功したといえます。

Alphagoは自分対自分の対局を無数に繰り返すことにより対局データを蓄積し、「このような局面では黒が少し勝ちやすいらしい」というような一見ふわふわした評価を、数理的に高度な正確性・妥当性をもって下す能力を獲得したのです。

 

 

 

GoogleのチームによるAlphagoの開発は、「ルールが決まっているゲームのふわふわした領域を克服する」ことで、よりレベルの高い「ルールの決まっていない領域におけるもっとふわふわした事柄についての問題を解決する」という試みへのステップという位置付けであったものと思われます。

 

 

長くなってしまったので一旦このくらいにして、続編として、「人間を超えたAIと人間はどう付き合うか」ということについて、オセロ・囲碁・将棋の例から書いてみたいと思います。

【将棋】折田翔吾アマvs本田奎五段(プロ編入試験について)

2月25日、折田翔吾アマのプロ編入試験第4局が行われ、折田アマが見事勝利!

通算成績を3勝1敗とし、プロ入りを決めました!

 

Twitterや生中継等で、将棋界隈は大盛り上がりだったみたいですね。

 

プロ入りから史上最短でタイトル挑戦という正真正銘の怪物・本田五段を相手に完勝してプロ入りを決めるというドラマチックな結末を誰が予想できたでしょうか。私も自分のことじゃないのにそわそわしながら時々途中経過を確認していました。

折田さん、おめでとうございます!!

 

 

折田アマはYoutuber「アゲアゲさん」としても活躍していることから、今回のプロ編入試験は非常に注目されており、将棋界に限らず一般の方の耳にも入る話題となっていたのではないでしょうか。

 

昨今は藤井聡太七段による将棋ブームの影響で、比較的多くの方がすでにご存じかとも思いますが、

 

そもそも、プロ編入試験とは何なのか?将棋のプロになる方法は?

 

というところを少し説明したいと思います(知ってるよという方は飛ばしてください)。

 

 

まず、かつては将棋のプロになる方法は、

 

奨励会に入会し、四段に昇段する」

 

というのが唯一の道でした。

 

奨励会というのはプロ養成機関で、6級から三段まであるそうですが、「奨励会6級」は「アマチュア四段又は五段」に相当するといわれています。

 

つまり、「アマチュア四段又は五段」以上の実力を持つ人の中でも強い人が「奨励会5級」になり、その中でも強い人が「奨励会4級」になり、さらにその中でも、、、という感じで、振るいにかけられ尽くした結果、天才の中の天才だけが四段=プロになれるのです。

 

奨励会を突破するのはそれほどに厳しい道のりなので、才能も力も十分、という人であっても、必ずしも皆が突破できるわけではありません。奨励会には年齢制限があり(最長29歳まで)、それを超えると、どんなに才能豊かな人であっても、プロへの道は閉ざされてしまうことになります。

 

しかし、プロになれずに奨励会を退会した人が、その後も将棋を続けてアマチュアの大会で活躍し、プロ並み、あるいはプロをもしのぐ力をつけてしまう例が出てきました。それが、2004年当時の瀬川晶司アマ(現六段)です。

瀬川氏は、奨励会退会後、プロ棋戦にアマチュア枠で出場すると、プロ棋士を相手に7割を超える高勝率を記録しました。

 

瀬川氏の活躍を受けて、「プロより強い人がプロになれないなんておかしい。瀬川氏をプロにしよう!」という動きが将棋界全体を巻き込んで大きくなり、その結果、瀬川氏に対して異例のプロ編入試験が実施されることになりました。

瀬川氏は見事合格し、奨励会ルートとは別のルートでプロになることに成功したのです。

 

その後日本将棋連盟は、特例扱いだったプロ編入試験を制度化し、一定の条件を満たしたアマチュア選手に対して一律に受験資格を与えることにしました。これが現行のプロ編入試験制度であり、奨励会ルートに対する唯一の例外となっています。

 

今回の折田アマは、制度化されたプロ編入試験における2例目の受験者でした。

なお、1例目の受験者は2014年当時の今泉健司アマ(現四段)です(合格)。約15年間で受験資格を得た人が2人しかいないということで、それだけでもいかに厳しい条件かわかりますね。

 

プロ編入試験は5名のプロと対局し、3勝を挙げれば合格となります。その試験官となるプロは「新四段を棋士番号順に選出」、つまりプロになりたての人から順に選ばれることになっているのですが、

 

つい先日プロ入り後史上最短でタイトル挑戦者となる快挙を成し遂げた本田奎五段(試験官に選ばれた時は四段)がその中に含まれていて、しかも第4局という正念場になる可能性の高いタイミングで対局しなければならないとは、折田アマにとってはなんという間の悪さ、、、

 

 

、、、と思っていたのですが、予想をはるかに上回る戦いを見せ、見事プロ入りを決めた折田さん。

 

おそらくプロ入り後もYoutuber活動を続けていかれると思いますし、棋士の中でもトップクラスにファンを獲得しそうですね。

 

今後の将棋界がますます楽しみになるニュースでした。

 

 

将棋のプロ入りといえば、現在奨励会三段リーグが佳境で、3月7日の最終日を残すのみとなっています。

注目は西山朋佳女流三冠の女性初の四段昇段実現なるか、ですね。これについても追って書きたいと思います。

 

このブログについて

このたび、ブログを開設しました。

 

テーマはブログタイトルと概要文にあるとおり、オセロ・囲碁・将棋(とその他のボードゲーム)について書いていこうと思います。

 

時事的な話題(注目の対局とか)がある場合はそれについて、他にはそれぞれのゲームについての上達法や現状などの一般的な話題や、自分の対局で出てきた面白い局面などを書ければと思っています。

 

オセロが得意な人、囲碁が得意な人、将棋が得意な人、別にどれも得意じゃないけど興味はある人、などいろんな方に読んでいただきたいと思っているので、極端にマニア向けな内容にはならないようにするつもりです。

 

筆者のボードゲーム歴等についてはプロフィールをご覧ください。

 

 

それでは、よろしくお願いします!